・・・・・・ 糠味噌漬(一名どぶ漬け)


 糠味噌は、数ある漬物の中で1番家庭的で、簡単、経済、滋養、美味であり、ことに食欲減退の夏季には、この漬物のおかげをこうむることが大きいといわねばなりません。

・・*1斗=18.039P/1升=1.8039P/1合=0.18P/1勺=0.018P/1貫=3.75L/1匁=3.75K

【糠床の作り方】 五人家族として、

・・・・・・糠(ぬか)=3升
・・・・・・塩=80匁(赤味噌を入れぬなら塩は120匁)
・・・・・・赤味噌=150匁
・・・・・・唐辛子=10本
・・・・・・*「赤味噌」とは、麦と豆でつくった「麦味噌」のことです。

・・・・・・容器は、なるべく口の広い、蓋の具合がよい瓶(カメ)を使います。
・・・・・・桶(オケ)でもよいが、手入れに不便なようです。

「床の仕込み」
 まず最初は、糠をフライパンか焙烙(ホウロク)で色の変わるまで空炒りします。これは赤味噌とよく調和させるためです。
 カメの中に、糠・味噌・唐辛子・塩を入れ、それに、煮冷ました湯を7合ほど入れ、手でよくかき混ぜ、おし蓋をし、おし石を載せておきます。おし石は500から1貫匁ぐらいを使います。夏季でしたら7日、冬期で2週間で、よく味が馴れてきますから、そこで野菜を漬け始めます。たびたびかき混ぜると、なお早く馴れてきます。
「漬け込み」
 瓜・ナス・大根・カブ・人参・菜っ葉類などなど、およそ漬けて食べられぬものは殆どありません。ワカメ・昆布なども結構な物です。
 つける野菜類はよく洗い、水気を切り、1度に食べるだけを、順々に漬け込むことが重要です。ナス・キュウリなど、色のよい若い物がよく、ちょっと塩をなすりつけて漬けると、いい色に漬かります。キャベツなどは、あまり大きくないのを丸ごと入れておき、上側からだんだんに剥がして行くと、お終いまで美味しく食べることができます。昆布は、ダシをとった後で結構です。ワカメは、水洗いしてから入れておきます。
*夏の頃、紫蘇(しそ)の葉や花穂、またサンショの葉や実などを入れると、風味がよくなります。ミカンの皮を乾しておいて入れるのは床のためによい。ただ1つ、魚の骨や頭を焼いて入れる方がおられますが、これは床のためによくありません。
「床の手入れ」
 漬けたり出したりの度に床をかき回します。固いところと柔らかなところが無いように、平均にならします。
 ザルなどを入れておいて、溜まった汁を捨てる方がありますが、糠や味噌からでる旨みや養分を捨てるようなものです。ただ、水気の多いい菜類を漬けた場合、床の上に溜まることがありますので、少し取り除かないといけません。
 漬物を漬けずに床を保存するには、おし蓋をし、おし石を載せておきます。すると、蓋の上に汁が上がってきます。汁が上がらないようでしたら、おし石を追加します。蓋の上に汁が上がり、空気が遮られていればカビを生じません。また、おし石の下の糠は膨張できませんので、発酵しません。こうして手入れをしておけば、孫子の代まで床は残ります。




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