・・・・・・ 漬物:昭和初期の漬方<1>



漬物についての(心得)こころえ

●漬物を食卓に出すタイミング。
食卓の準備が、すっかりできてから出します。タクアンやナラ漬けは、あまり味や色がかわりませんが、ぬか漬けや浅漬けは出しておくと、すぐに色もかわり、味もおちてしまいます。
●洗うときの注意。
できるだけ手早く洗い、水気をよくきること。でも、絞りすぎると、味がなくなってしまいます。しぼり加減がたいせつ。
●漬物とまな板
漬物を切るまな板は、できれば専用のまな板を用意しておきたいものです。用意できないのなら、ほかの食材の味や香がうつらないように、まな板を十分に洗い、乾いた布巾で拭き上げ、お切り下さい。包丁も同じ事です。
●盛り方のご注意
漬物も料理のひとつです、盛かたがたいせつです。一人ずつなら小皿でよいでしょうが、盛り合わせの器は、どちらかといえば、大きすぎるくらいが、よいようです。小さめの器に山盛りより、大きい鉢に軽く盛ったほうが、おいしそうに見えます。一種類を盛るのでなく、たとえば黄色い沢庵に、緑のキュウリ、白いハクサイなどと、数種を色彩(いろどり)よく盛りましょう。
●漬物と醤油(しょうゆ)
漬物と見れば、ダブダブと醤油をかける方がおられます。漬物には、醤油をかけた方がよいものと、かけては台なしになるものがあります。でも、人により好き嫌いが有りますから、お客様にお出しするばあい、はじめから醤油をかけずに、醤油つぎを添えて出すのが親切でしょう。


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●漬け樽〔容器)
普通は、味噌樽・酒樽・醤油樽などの空き樽を使いますが、漬物の種類によって、瓶(カメ)・ビンを使います。古い器でしたら、使う前に水をはっておきます。新しい味噌樽・醤油樽は、じゅうぶんに「アク」出しをしてから使います。
●おし蓋(ぶた)
「おしぶた」は漬物とつけ汁を分ける、さかいですから、大きすぎても小さすぎてもいけません。漬物との間にすき間ができてはいけません。いつでも、フタの上はつけ汁、下は漬物となるよう、上下のさかいをはっきりさせておきます。
●おし石
石の重さは、漬物の分量、種類によって、ちがってきます。重要なのは、おし蓋の上へつけ汁が上がってくる重さがなければいけません。「おし蓋(ぶた)」も「おし石」も良く洗い、乾かしておきます。
●漬物の種類
漬物の種類はたいへんに多く、数えれば、おそらく千数百は有りそうです。塩だけで漬けるもの、ヌカ・麹(コウジ)・酒粕(サケカス)をつかったもの、酢・しょう油・味噌を使うなど、たしゅたようです。漬物のはじまりは、紀元1400年ころからといわれています(昭和7年当時の認識)。そのころは、ただ塩で漬けるだけだったのでしょう。
●漬物の置き場所
できるだけ乾燥した、日の光から遠い、冷たい場所に置きます。土間でしたら地面にじかに置かず、てきとうな台の上に置きます。蓋があっても、その上に丈夫な紙をかぶせ、チリのかからぬように気をつけて下さい。蓋がないなら、なおさらです。
●漬物の保存
初めて漬物を出すとき、おし蓋の上に上がったつけ汁が、ブツブツと発酵していたり、カビが発生していたり、特別な臭いがしたら、おし蓋の上に上がったつけ汁を、残さずくみ取って、捨てます。
ただし、つけ汁は、保存するのに大切なものですから、くみ取り捨てたときは、さらに塩水をつくり、おし蓋の上に溜まるまで、注ぎ込んでおく必要があります。つけ汁は細菌やカビを防ぐためですから、長く保存する場合、蒸発などで、つけ汁が乾かないよう注意がひつようです。



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