・・・・・・ 即席芥子漬と麹(こうじ)入り芥子漬

芥子漬けの発明されたころは、かならず一口茄子(ナス)でしたが、やがて大茄子も利用するようになり、今日では、色々な野菜も漬けるようになりました。

即席芥子漬け
●材料と用器=茄子、キュウリ、大根、小蕪(カブ)、白菜、松茸、筍(タケノコ)などの内、
お好みの野菜を300匁。
・・・・・・ 塩:20匁/芥子(和ガラシ)粉:1合(20匁)/水:1合/醤油:7勺
・・・・・・ だし昆布:2寸(約6B)角/酢:3勺/瓶(カメ)またはビンなどの容器
・・・・・・ *きざら三十匁
・・*1斗=18.039P/1升=1.8039P/1合=0.18P/1勺=0.018P/1貫=3.75L/1匁=3.75K

【】上記しました材料の「*きざら三十匁」ですが、広辞苑にはありませんでした。90歳になる母に聞きましたところ、「(ざらめ)糖には白と黄色の2種類あるから、黄色の(ざらめ)糖のことかしら」と申します。ただ、わからないのは、原本の芥子漬の項文中で「*きざら」の用法に触れたケ所が無いことです。文中に「……砂糖を入れて煮立たせ……」とあるのが用法でしょうか。

●漬け方=*松茸と筍は、ほかの野菜と同じに扱えませんから、後記いたします。
(1)いずれも水洗いし、一口ほどの大きさに切ります。丼(ボール)の様な器に入れ、塩をふりかけ、手で押し揉んで固くしぼり、汁を捨てて、漬物容器に入れ、そのままのカラシ粉を、上から振りかけます。
(2)一方で、鍋に水と昆布を入れ、煮立ったらすぐ火から下ろし、自然に冷めるのを待ちます。
(3)別に酢と砂糖を入れて煮立たせ、冷ましたところへ、(2)の昆布ダシを加えますが、味の好みがありますから、ダシは半分ほど入れて味を確かめ、足りないようでしたら好みの味まで加えます。
(4)(3)を(1)のカラシの上へ、ビシャビシャになるていどにかけ、箸でつついて、すみずみまでかけ汁がまわるようにします。ただし、かき回さないようにします(苦味が出る)。こうして、器にかぶせ蓋をしておきます。
★約1時間後には美味しく食べることができます。食べ始めるときに、かき混ぜて下さい。
★夏でも二十日間ぐらいは保存できますが、こういうものは、作るときの注意、不注意で味や保存にに大きな差がでます。
この製法は、自然に出来る四季の野菜を、そのままつけるのですから、即席で頂けますし、材料はいつも手に入ります。芥子漬けとしての味は申し分なく、出来そこなう事もありません。漬け方にしても、もっとも理想的な、時代にかなった作り方ですから、なにも苦しんで保存する必要はないと思います。

=松茸と筍=
●松茸は一口切にして、水:一升/塩:1合の割合の塩水に1時間ほど浸してから、ご飯蒸し(蒸し器)で、シャキシャキと歯切れがよくなるまで蒸し、笊(ざる)に広げて冷まします。
●筍(タケノコ)は皮をむいて一口切にして、煮立った湯に入れて10分間ゆでます。ゆでた筍は水にとって30分以上さらして、よく水気をきります。
★あとは、前記の野菜と同様の手順で、漬け込んで下さい。

麹入り芥子漬
芥子漬に麹(こうじ)を入れるのは、遠く元禄(1688〜1704年)ごろから始まったようです。ちょっと口当たりは、普通の芥子漬けより、このほうがよいようですが、長く保存するのには向きません。

・・*1斗=18.039P/1升=1.8039P/1合=0.18P/1勺=0.018P/1貫=3.75L/1匁=3.75K

●材料と用器=塩漬けの野菜:100匁/芥子粉:10匁/麹:5勺/醤油:3勺/水あめ:40匁
材料はいったん水で洗い、あまり塩辛い様でしたら塩出しをし、固くしぼっておきます。
水あめ(さらしてない安価なものでよい)に醤油を混ぜ合わせ、その中へ前記の材料を、まる一日漬けておき、 前述の芥子漬けの要領で芥子粉をふり込み、麹をほぐしてへ、よく混ぜ合わせたら密封しておきます。
一週間くらいから食べはじめられます。

★ご注意:芥子は前述してまいりました様に使用しますと、五分間内外で発酵し、辛くなり、苦みも去ります。練って固くなってからは、芥子のアク(苦味)は取り去ることができません。




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