・・・・・・ すぐき漬け

千枚漬けと同様、京都名物の一つとして有名です。家庭で漬けるのも興味有るもので、これに適した材料は「聖護院大根」の小型、次に蕪で、いずれも葉のついたまま漬けます
 この発明の動機は、鹽壓(しおおし)の失敗を味直ししようと色々漬け直した結果えたもので、今では、わざわざ漬けるようになったのです(真偽は不明ですが、原文のまま)。

「聖護院大根」京野菜の代表格。大型の丸大根。江戸時代の終わり頃に尾張の国から京都府左京区聖護院の東、黒谷にある金戒光明寺に奉納された宮重大根という大根が、当時その地域で栽培されていた大根に比べて長くて大きかったことから、聖護院に住む農家がもらい受け、採種したことが誕生のきっかけとつたわります。最初は長かったのですが、短いものの種を選んで栽培し続けた結果、今のような丸い形となったのだそうです。

*1斗=18.039P/1升=1.8039P/1合=0.18P/1勺=0.018P/1貫=3.75L/1匁=3.75K

【材料と容器】
・・・葉附きの聖護院または蕪を1貫500匁
・・・塩=60匁
・・・おし石2貫匁
・・・酒粕(2番粕でよい)100匁
・・・だし昆布=長さ2〜3寸、幅5寸
・・・醤油樽(タル/それに類した容器)

【下漬け】 大根または蕪をきれいに洗い、水気のついたままタルに具合よく1段並べ、塩をパラパラと振りかけ、また大根なり蕪を並べて塩をふる。これを繰り返して、おし石を載せておきます。  5〜6日目に出して味を試し、塩加減をみて、まだ早いようなら、そのままおし石を載せ、漬け具合をまちます。都合で10日や2週間後でもよいのですが、塩漬けが出来上がったら、4時間ほど陰乾しして本漬けにかかります。
【本漬け】 大根なり蕪は、つけ汁でよく洗い、葉先まで固くしぼって汁を捨て、日陰に並べておきます(陰乾し)。タルも、よく洗って、乾ききらぬよう日に当てておきます。
 昆布を1〜2寸(1寸=3.03B)角に切って、タルの底のところどころに置き、酒粕を少しづつところどころに置きます。大根なり蕪に葉を一つづつていねいに巻きつけ、できるだけ隙間の無いよう並べ、その上に昆布をところどころに被せ、酒粕をのせ、これを繰り返して詰め上げます。
 おし蓋をし、おし石を載せておきますと、2日目頃から汁が蓋の上に上がってきて、だんだんに味がついてきますから、汁が上がった翌日1日だけ、おし石を除きます。(これは昆布を急にふくらませる為です)
 2週間目くらいから食べ始められますが、日の経つに従い、すぐき漬けの本当の味や風味、色が発揮されます。
 昆布は上等の物を用いないと、味も風味も損なわれます。本当は大根も蕪も洗わずに、そのままの方が美味しいのですが、気味が悪いでしょうから、さっと洗い、葉も一緒に適宜に切って召し上がって下さい。皮も剥かないほうがよいのですが、体裁と、歯切れを平均にするには剥いた方がよいでしょう。
*文末に「味醂をふりかけるのは、味付けの意味より、昆布の粘りを防ぎ、且つその色を赤くしないためです」と、有りますが、本文中には「味醂」に触れたか所がありません。前章の「千枚漬け」と混同したか、「酒粕」の事なのか……。




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