・・・・・・ 福神漬け

 この漬物は、東京大森町の、あるお爺さんが、夏祭りの神前に供えた野菜「大根・蕪・白瓜・茄子・鉈(ナタ)豆・紫蘇の葉・夕顔(カンピョウ)」の七種を塩漬けにしたところ、味が悪かったので、さらに醤油で味をつけたのが元で、福神漬けといわれるようになったのだそうです。
 福神漬けの他に、東京漬け・吹寄漬け・日本橋漬け・八千代漬け等が有りますが(昭和八年頃)いずれも福神漬けを応用したものです。
 家庭用としては、味の悪い沢庵漬けや、すこし古くなった塩漬けを利用すれば、廃物の利用ともなり、経済的で美味しい福神漬けができます。沢庵は酸っぱくなったのでも、少し臭みがあってもかまいません。水によく晒してしまいますので、美味しい沢庵でも同じことです。
 沢庵に蓮根を混ぜて漬けたのは、なかなか味の良いものです。それをご紹介します。


*1斗=18.039P/1升=1.8039P/1合=0.18P/1勺=0.018P/1貫=3.75L/1匁=3.75K

【材料と容器】
・・・沢庵:7割、蓮根:3割とし300匁
・・・*(または塩漬けの野菜300匁)
・・・醤油:1合2勺
・・・きざら:15匁(*きざら=参照)
・・・だし昆布:2寸角
・・・瓶(カメ)または瓶(ビン)
・・・・*1寸=3.03B/1分=0.3B

【下準備】 沢庵は1分角ほどの霰(アラレ)に切り水に浸し、数回水を替えて、無臭。無味になるまで晒し(さらし)ます。
 蓮は、皮をむいても、そのままでもよく、5分ほど茹でて水に晒し、太いものでしたら四つ割りか二つ割りに細いのはそのまま、小口から、薄く切り水気を切っておきます。もし生野菜なら、いったん塩漬けし、完全に塩押(塩)しのできたところで、細かく切り、塩出ししてから作ります、浅漬ではだめです
 沢庵の塩出しができたら、固く水気を絞(搾)りますが、手で絞っただけでは水気がとれません、手で絞(搾)ったのを布巾などに包み、おし石を載せ、すっかり水気を絞(搾)り出します。蓮も乾いた布巾で、更に水気を拭き取っておきます。
【作り方】 鍋に醤油とだし昆布の砂をはらって入れ、弱火(とろ火)で煮立て、4〜5分たったら昆布だけ取り出し、きざらを加え、溶けたら味加減をみて、甘いようなら醤油を加え、もし鹹(からい)ようなら砂糖(きざら?)を加えます。これを一煮立てしたら火から下ろし、すっかり冷めてから、用意の沢庵と蓮を漬け込みます。漬け汁はタップリの方がよく、足りないようなら、前の方法で作った漬け汁を加えます。
 もし、紫蘇(シソ)の葉か実の塩漬けが有りましたら、固く搾って入れると、いっそう風味がよくなります。生の紫蘇の場合は、塩もみし、固く汁を搾り捨て、千切りにして加えます。
 漬けてから1時間後、もし晩に漬けたのなら翌朝までそのまま漬けておき、もう一度、野菜も一緒に火にかけ煮立たせ、5分間かき混ぜてから火から下ろし、煽いで急激に冷ますと、てりが出ます。それを冷めてから、瓶かビンに入れておきます。
 完全に密封すれば、いつまでも保ちますが、密封しなくても、夏季で一月くらいは大丈夫です。




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