ファースト&スロー(下)

脳は、システム1(速い思考、直感、感情)とシステム2(遅い思考、論理的)の2つの思考を持ち、日常それらを組み合わせている。本書は、特にシステム1がもたらす認知的錯誤(直感的に信じてしまう認識の誤り)について語っている。

 

このような脳の構造を利用すると、プロモーション、政治、詐欺などの世界で大きな影響を与えることができてしまう。もちろん、正しい使い方もあるが、不当な利益を得るために使うこともあるだろう。

 

そこで、錯誤に陥らないことが重要であるが、筆者によると困難という。それでも、①他人そして最終的に自分について、判断や選択のエラーを突き止め理解する能力を高める、②評価を数値できるときは、直感に頼らず数式で表す、③個人で決めるのではなく組織(複数)で決定する、という対処法があるという。まさに、情報弱者にならないための方策である。

 

このようなことを深く学ぶと、発信者(行政、企業、メディア等)にとっては、人のコントロールがより容易になり、受信者(市民、消費者等)にとっては、賢い人間になることにつながる。生きていくための大いなる「知恵」と思える。

2017年08月16日